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〈現代アンプ私論③〉 「信号干渉と電源干渉そしてグラウンド干渉」

一つの電源で左右二つの信号を増幅するとアナログレコードの音溝のように互いに影響を及ぼし合います。
小出力アンプの電源は脆弱なものが多く、左右の増幅信号は互いの影響が大きく現れる傾向にあります。
大出力になればなるほど同じ出力で聴く限りその影響度合いは相対的に少なくなります。

真空管のように出力トランスが要らないトランジスターアンプは真空管時代では考えられないほどの出力が簡単に得られ、音質の劣化要因である電源を介した左右のチャンネル干渉の表面化を抑える効果を果たしました。
ステレオレコードのリリースとトランジスターの生産が重なった事で共に市民権を得たように広まりました。

家庭で使う音量程度の動作では真空管アンプと比べて高出力のトランジスターアンプは電源を介した左右チャンネル間の互いの影響を覆い隠してくれたのです。
「モノーラルレコードを鳴らす真空管アンプ」に対して、新しく世の中に出て来た「ステレオレコードを鳴らすステレオトランジスターアンプ」という図式はステレオアンプの低価格化が引き金になってコンポーネントオーディオブームを作るはしりになりました。

当時のハイパワー信仰はダイナミックレンジの拡大による迫力の向上がもたらしたためと考えられていますが、大出力になるほど実際の家庭でのリスニングレベルは左右チャンネル同士の互いの影響が少なくなる視聴環境になったことが相対的に音質を向上させたと見た方が良いと思うのです。
大出力のアンプに買い替えても(同じグレードでも後継機種はよりハイパワーになっていた時代でした。)リスナーはそれまでと同じ音量で聴くのが普通ですから、2倍の出力のアンプに変えると電源を介した左右チャンネルの干渉は相対的に半分に減ることになります。
結果的に音質向上を得られたのです。

アナログレコード時代にはステレオの音溝自体にクロストークがありましたし、ステレオカートリッジのチャンネルセパレーションも僅か25dB前後でしたから常に数%左右の信号が混ざり合っていたことになります。
左右のオーディオ信号が干渉しているような状態ではありましたが、トランジスターアンプの高出力化と電源の強化により音質向上を果たしてオーディオブームを後押ししました。。
カーラジオとカセットテーププレーヤー一体化したカーステレオが一般化する頃には多くの若者がレコードをカセットテープに録音して車で聴いていました。
アナログプレーヤーとステレオアンプ、スピーカーを中心にしてAM/FMチューナーとカセットデッキを持っていない若者はいないのではないかと思われるほど一般的になったのです。
驚異的な精度と特性を持つ超高級カセットテープデッキがリリースされたのもこんな時代でした。

そしてオーディオの更なる発展を担ったCDディスクとCDプレーヤーがリリースされました。

ダイナミックレンジ、SN比、チャンネルセパレーションのどれもが90dB以上の数値をもつCDはアナログレコードとはまさに二桁違いの特性を持っていました。
デジタル対応を謳ったアンプはハイパワーであり、強力な電源を搭載して新たな飛躍を期していましたが、残念ながらブームは程なく失速してしまいました。
アナログレコードにあった信号干渉が解決され、接続されるアンプも電源干渉による音質劣化に備えていたのですが、程なく「デジタル臭いサウンド」は悪い音の称号になってしまいました。

CDプレーヤーの出力が左チャンネル-左右共通グラウンド-右チャンネルという3線出力であったことが原因です。

一つの信号は一つのグラウンドで完結しなければならないという単純明解な電気理論を無視した規格はスペック通りのパフォーマンスを発揮できなかったのです。
共通グラウンドでは微妙は表現が無くなってしまうのです。

増幅回路のグラウンドとは人間の概念としての存在であり、実際のグラウンドと称されている部分は増幅回路の一部であるため増幅信号が存在しています。
増幅回路の一部をほかの増幅回路に接触させるなどありえない状況をオーディオ設計者がアース=グラウンドを0Vかつ0Ωと思い込んだ結果すべての機器に左右共有グラウンドを織り込んでしまいました。
アナログレコード時代には聴く術がなかったので仕方ないとはいえ、結果的にグラウンド干渉歪みを聴かせる事態を招いてしまったのです。

アナログレコードをより良く再生していた努力の及ばないグラウンド干渉歪みがオーディオブームを失速させてしまったのです。

確かにグラウンドを共通にしてもアンプの動作にはなんの影響もありません。
「音質」もまったく変化がありませんが、空間再現が出来なくなっているために奥行き表現がなくなってしまいます。

救いはデジタルオーディオ出力規格が設定され、デジタル/アナログコンバータを使った再生が出来るようになったことです。
デュアルコアD/Aコンバータによるデジタル音源の再生は左右アースの分離=グラウンドアイソレーションを成し遂げて本来のCDの音楽性をリスナーに届けることが出来るようになりました。

なぜグラウンド干渉歪みが奥行きや空間の再現にダメージを与えるのかは次項で述べてゆきます。

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