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大昔の真空管アンプとトランジスターアンプ

真空管がアンプの増幅素子の担い手だった頃に現れ始めたトランジスターアンプは真空管アンプの回路をそのまま半導体素子に置か換えたような回路のものでした。
真空管パワーアンプの出力トランスのような高電圧が掛からずインピーダンス比も少なかったため小型のものが使われていました。

やがてパワートランジスタを使ったエミッターフォロア出力段が採用されるようになると出力インピーダンスはスピーカーのインピーダンスを下回るようになり出力トランス不要のOUTPUT TRANS LESS=OTLアンプがトランジスターアンプの主流になっていきました。

ここではアンプの音質よりトランスコストの掛からないメリットを選択したアンプメーカーが真空管からトランジスターに軸足を移したことを記しておきます。

コストメリットに加えて真空管には必須のヒーター電源が不要な上に寿命が長くサイズが小さいというメーカーにとって多くのメリットがあり徐々にメーカーアンプの殆どはトランジスターアンプになってしまいました。

コンソール型のステレオ装置の頃はまだ真空管が中に収まっていましたが、セパレートステレオ装置が広まる頃にはトランジスターアンプが主流になり「〇球」という言葉に代えて「〇石」、「〇Tr」などという表示がチューナーの窓の端に数字があったような気がします。

随分前の話を持ち出したのはその頃のトランジスターアンプの回路は過去のものとなりましたが、真空管アンプの回路は実際のところ「十年一日の如し」どころか化石のごとく進化が止まっていることを記したかったのだとご理解ください。

真空管アンプのグラウンド

グラウンドのワンポイント化はノイズの混入を避けるだけでなく各増幅段のグラウンド同士の干渉を避けることにつながるため音楽表現が高まるのでございます。
真空管アンプでは自作アンプからブランドになったメーカーまでがアース母線式配線やアンプ筐体をアースと見なして真空管ソケットやトランス取り付けネジ部を流用して実装部品のグラウンド端をシャシーに落とすマルチポイントアースを採用しております。
アース母線式配線もマルチポイントアースもアース=グラウンドは0V、0Ωであるというお題目に基づいた手法であるため現実的には実装されたコンデンサーや抵抗器のグラウンド端にあるリード線や配線材の抵抗分による信号=グラウンド信号が発生します。
これらのグラウンド信号が直接電源グラウンド=グラウンドポイントに戻れば自然な音質となりますが、アース母線式配線やマルチポイントアースではグラウンド端同士が互いに影響を与え合いながらグラウンドポイントに戻ることになります。

三極管ではグリッドに入力された信号のグリッド抵抗器のグラウンド端と動作バイアスを与えるカソード抵抗器のグラウンド端にグラウンド信号が発生します。
電圧のかかるプレートにはグラウンドポイントの支店のようなパスコンがあり電源ラインに乗ったノイズを吸収する働きを担っておりますがグラウンド端では誘電体の先が電源ラインであるため去来するグラウンド信号を収斂する働きは期待できません。
単管動作においてもそれぞれのグラウンド端を介したグラウンド信号の絡み合いがある上に初段、ドライブ段、出力段という増幅回路に加えて電源の整流平滑回路のグラウンド端が絡みあっている真空管アンプではすべてのグラウンド端をダイレクトにグラウンドポイントに戻さなければ互いに干渉しあって特有の癖を持つことになります。

もっとも「特有の癖」によるフォーカスの合わない音は人によっては不自然な響きを齎すものの人によっては「夜目遠目傘の内」という言葉があるようにぼんやりしているが故に美しく見えたりするのがオーディオの趣味としての拡がりでもあるのでございます。
実はグラウンドのワンポイント化と放射状サーキットパターンを実現している真空管アンプは極少数であるためほとんど聴き比べる機会が無いあたりを拙の怠慢とされると謝るしかないのでございます。

HD真空管パワーアンプ

スピーカーケーブルの抵抗分より低い内部インピーダンスは余り意味がないとは言ってはみたものの真空管パワーアンプではダンピングファクター10でも0.8Ωとなりケーブルの持つ抵抗値分でのマスキングを期待するにはまだ高い内部インピーダンスです。
三極管は内部インピーダンスが低いとされていますのでダンピングファクターが良くなりそうですが、五極管に比べれば低いというレベルですので一桁台が関の山です。
効率のよい五極管は増幅率が高く多めのフィードバックを掛けることが出来ますが、内部インピーダンスが高いためやはり一桁台になってしまいます。
ですのでダンピングファクターなどは一桁あればよいとなっているのかも知れません。
無帰還の直熱三極管アンプがもてはやされるのは負帰還を掛けた特性の良化より「無帰還」という看板の方が魅力的だと見切った方に文字で説得されたのだと斜に見ながら低い出力インピーダンスの真空管パワーアンプを考えておるのでございます。
一番先に浮かぶのはアンプの裸ゲインを稼いで大量の負帰還をかける方法です。
高負帰還真空管パワーアンプの代表に挙げられるのが「ウイリアムソンアンプ」ですが、有名な割には製品化されたものではないらしくまともに動かないアンプの代表みたいなものでありながら名前が語り継がれていることから、イソップ物語の「すっぱい葡萄」のように決め付けありきの評価となったのかも知れません。
上手く行かなかったアンプからは音が出ませんのでそういった論調に至ったに過ぎないとも考えなくてはいけないなと思うのです。
その手の話しは高能率のスピーカーでなくてはロスが多くて微妙なニュアンスが表現できないという論調に似ているように思います。
家庭用のスピーカーの10倍も効率が高い拡声器系由来のスピーカーは大きな音が出ますが、概して口径の大きな薄い振動板を採用しております。
口径が大きく振動板が薄いスピーカーは分割振動を起こし易く分割振動の共振レベルを上手く上げて測定上の数値を押し上げているように思うのです。
無論共振は神経を逆撫でするものもあれば得もいわれぬ「美音」を奏でることもありますので拡声器由来のスピーカーを否定しているわけではございません。
ただエネルギー不変の法則がある以上1入れて10出るのはどこかが1/10に減っていなくては計算が合わないと感じておるのでございます。
話を高負帰還アンプに戻しますと半導体アンプでは真空管には無いPチャンネル素子があり直結回路でゲインを稼いでおいてフラット特性になるように大きな負帰還を掛けることができますが、真空管パワーアンプでゲインを稼ぐためにはコンデンサー結合の増幅段数を増やした上にスピーカーインピーダンスとの整合のために出力トランスを介在させますから位相が一方向に回り続けてしまい一筋縄では行かないのが現状です。

HD真空管アンプはゲインを稼いで負帰還を掛ける手法ではなくインピーダンス変換回路である真空管ボルテージフォロワ回路を世界で初めて実用化したものです。
第一弾となるモノーラルフルバランス真空管SCPPパワーアンプ「MODEL12M HD」は一聴しただけでこれまでの真空管アンプや半導体アンプとの違いを感じていただけるものとなっておるのでございます。

ダブルスタンダード

半導体アンプのダンピングファクターと真空管アンプでのダンピングファクターが大きく違いながらも共に認知されているのがなにやらダブルスタンダードだと思うのでございます。
更にややこしいことにダンピングファクターの影響を受けるスピーカー側と送り出すアンプ側では数値が一致しません。

ダンピングファクターの測り方などを紐解くとアンプとスピーカーを模した8Ω抵抗をつなぐ図が出てきます。
無負荷時と負荷時の出力値を測って変化率を算出すると記されているのですが、実際のリスニングではスピーカーケーブルを介在して聴いておるわけですのでやや現実に即していないなと思うのです。
アンプの出力端子側で測ればケーブルの抵抗分とボイスコイルの抵抗分が負荷になりますので2SQ(2mmスクエア=ニスケ)のケーブル10Mを用いた場合の抵抗分約0.1Ωとスピーカーユニットの8Ωを合わせた約8.1Ωが負荷になります。
0.988倍負荷が軽くなりダンピングファクター値は僅かによくなる方向になります。

一方スピーカーユニット端子側からみるとアンプの内部インピーダンスとケーブルの抵抗分を足したもので駆動されることになります。
ダンピングファクターが100の場合は内部インピーダンス0.08Ωのアンプとニスケのケーブル抵抗分の0.1Ωが足されて実質0.18Ωの内部インピーダンスのアンプで駆動されているわけです。
ダンピングファクター100のアンプと言えどもスピーカーユニット端子側からみるとケーブルの抵抗分のためダンピングファクターは半減してしまうのです。
ですので、ダンピングファクターが無限大で有ったとしてもスピーカーケーブルの抵抗分より低い半導体アンプの内部インピーダンスはマスキングされて意味を持たなくなるのではないかと自問するのです。
とはいえダンピングファクターが1を割り込むとスピーカーの持つインピーダンスカーブの沿った特性に近くなりますので低域が膨らみ高域がハイ上がり気味に聴こえますので、好ましいダンピングファクター値があるのではないかと思うわけです。
高い方と低い方とで二極化しているダンピングファクター値のオーディオ機器としてはほとんど存在しない値あたりに美味しいところがあると睨んでHD(ハイダンピングファクター)真空管アンプに話をつなぐ魂胆なのでございます。

ダンピングファクター

ダンピングファクター

ずいぶん前に歪み率について記した折にダンピングファクターについても考えたのでございます。
歪み率はある程度であればよいようにダンピングファクター値もまたそこそこであればよいのだと思うのです。
この数値もまたアンプの音質傾向をざっくりと説明していたりはしますが、正解値は?となるととりあえず黙るしかありません。
歪み率が限りなく零を求めるのに対してこちらは100点満点どころではなく青天井ですから半導体アンプでは100だの200だのどころではなく1000だの3000だのという数が記されたりしております。
真空管アンプでは10もあれば高い方ですし巷では2,3あれば真空管アンプはいいんじゃないのってなものなのでなにやらダブルスタンダード気味の数値なのであります。
流石に1を割り込むと音質にさし障りがあるように聴こえますので数点は欲しいかなと思うのでございます。
だからと言ってダンピングファクター値10が1の10倍よい音がするわけでもなく、まして100なら100倍良い音がするなどと言う御仁が居られれば近寄らないのが賢明というものです。
ダンピングファクターが高ければスピーカーの不要動作を抑えはしますが、動くのがスピーカーなのですから信号が無くなってもやはり多少動くのがスピーカーってものです。
スピーカー端子をショートして軽く触るとオープンより動き難くはなりますが、もとより動くように作ってある以上異物がボイスコイルに噛んで不動品となったもののように微動だにしないわけではありません。
で、幾つならとよいかとなると真空管パワーアンプで実現できる値を伝えて青天井スタンダードアンプなど果てしが無いのですぐに陳腐化するんじゃのと答えて、はぐらかしながら工夫を凝らしてみるのです。
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