歪み率

真空管アンプ作りに携わっていると半導体アンプ並みには歪み率は下がらずダンピングファクター値が上がらないことに真空管の持つ素性を感じます。
音質からはそう言った素性は聴こえませんので測ることの意味がどこにあるのかとも感じます。
人柄を知ろうとしてその方の体重や身長を測っているようなものではないかといつも疑問が湧くのです。

数値といえば学校でのテストは100点満点でした。
満点の奴もいれば拙のように低い点数の奴もいましたが、もっと下の零点となると1に限りなく近かろうが0に限りなく近かろうが零点は零点なのでした。

真空管アンプも半導体アンプも聴くに支障が無い歪み率なら零点でよいのではないのかと思うのでございます。
確かに10%くらい歪むと耳障りですし歪みの無い方がよいとはなりますが、0.1%と0.01%の歪みを音質の好みを抜きに聴き分けても「人間測定器」自慢大会でもあれば別ですが、音楽を楽しむにはまったく意味をなさないように思って測定器のスイッチを落とすのでございます。

デュアルモノーラルフルバランス真空管プリアンプ「MODEL11Ⅱ」徒然②


出力値を稼ぐためにシングル出力トランス2個をバランス動作させることでは限界があるためプッシュプル出力トランス1個に換装して出力アップを図ることにしました。
プッシュプル回路としたオシロ波形はシングルではつぶれるレベルを超えても綺麗なサイン波を表示します。
直結自己バイアス回路による電源ロスがありながらも25Wを越える波形画面を見るとリリースしたい衝動に駆られますが、残念なことに「MODEL57」、「MODEL51」のシングルアンプの良さを失った所謂真空管プッシュプルアンプであることが一聴してわかります。

「MODEL52」はバランスシングルアンプの音質を取るかプッシュプルアンプの出力値を取るかの二者択一を迫られました。
音を直接聴いて頂けない雑誌テキストでは出力14Wより25Wの方が分かりやすく読者の購買意欲に応えられるように思いましたがリリースする側の姿勢としてその判断はしませんでした。
と云うより物事を逡巡するとその堂々巡りから逃れるため第三の道を見つける癖があるのでシングルアンプの音質のまま高出力を得るべく一つのトランスコアにシングルアンプの巻き線二つを巻いて出力を重ねるアイデアが浮かびました。
信号レベルはトランス2個使いの時と全く同じですがバイアス値を深めにすると補い合って出力を稼げる可能性があると踏みました。

「MODEL51」のライン出力トランスを巻いて頂いたトランスメーカーさんにまたも試作をお願いしました。
プッシュプル出力トランスの強制的なシーソー動作ではなくシングルアンプの出力を重ねて出力アップを図るアイデアの出力トランスが届くと不安と期待の入り混じった動作確認をしました。
バランスシングルアンプ回路の約5割増の20Wが得られ、シングルアンプの精緻な音質のままプッシュプルアンプの出力が得られる真空管パワーアンプ回路をシングルクロスプッシュプル=SCPPと名付けました。

デュアルモノーラルフルバランス真空管プリアンプ「MODEL11Ⅱ」徒然①

「MODEL11Ⅱ」のアイデアはデュアルモノーラル真空管プリアンプ「MODEL51」をデュアルモノーラル真空管プリメインアンプ「MODEL57」をベースに製作したことから生まれました。
フルバランスプリアンプの源流がプリメインアンプでは有難みが無いようですが、「MODEL11Ⅱ」を説明するには「MODEL57」からはじめないと突然変異のようになってしまいます。

シングルアンプとしては群を抜く高評価を得た「MODEL57」の音質を保った真空管プリアンプをまず計画したのです。
「MODEL57」のスピーカー駆動用の出力トランスをバランスライン出力トランスに換装するアイデアが浮かび取引先のトランスメーカーさんに相談しました。
600Ω負荷でありスピーカーと比べると小出力なので小型のライン出力トランスが届くものと思っておりましたが、届いたものはスピーカー駆動の「MODEL57」の出力トランスと同一コアサイズの大きなものでした 。

まずは聴かなくては前へ進みません。
「MODEL51」試作アンプを組み上げてパワーアンプに送ることにします。
まだバランス入力を備えた「MODEL52」も完成しておらずとりあえず2台用意した「MODEL57」のL/Rチャンネル入力に「MODEL51」のXLR出力をHOT/COLDのRCA端子変換ケーブルで入力しました。
出力は「MODEL57」のスピーカー端子L側にスピーカーの+側を、R側にスピーカーの-側をつなぎます。

「MODEL57」の音質の良さを保ったまま更にダイナミックな音楽表現を堪能しました。
「MODEL57」の2倍の14W出力ですが、単に倍出力と云うだけではなく質感にステレオ使いでは得られないリアルさがあります。
しかしシングルアンプの2倍というバランスシングルドライブアンプの理論値通りの数値では真空管パワーアンプ単品コンポーネントとしてはやや物足りないので無い頭をひねることにしました。

「MODEL11Ⅱ」をリリースします。

デュアルモノーラル真空管フルバランスプリアンプ「MODEL11Ⅱ」をリリースしました。

P1130062.jpg
光の加減で白色に見えますが電源表示とXLRセレクタ表示はブルー、RCA表示はグリーンが標準となっております。

音楽信号をグラウンド基準のアンバランス伝送ではなく正相/逆相信号によるバランス伝送で送るとグラウンドの影響を受け難いため良好な信号伝送となります。
伝送だけでなく増幅回路そのものをフルバランスアンプとするとグラウンド干渉ノイズの影響を受けない理想的な増幅回路となり「オーディオの音」が全くしないアンプ動作になります。

グラウンドアイソレーションメソッドを生かした正相/逆相アンプは電源部が一体になった「増幅/電源モジュール設計」となっておりアンプ回路との電源ラインやグラウンドラインの引き回しがありません。

「MODEL11Ⅱ」内部

「MODEL11Ⅱ」は今までにない音楽空間の再現を可能にするため絶縁樹脂ベースとアルマイト材による増幅エンジン、左右チャンネルのグラウンド分離を実現する高精度リブドベルトドライブボリューム機構、グラウンドノイズスプリッターによるアンバランス/バランス変換モジュール、独立電源トランスによる5系統入力セレクターリレー駆動、アンプ部に4台、リレー駆動に2台の電源トランスの搭載を始め数々の音質向上対策を施しています。
増幅部はリーケージフラックスがほとんど出ないRコアトランスを、セレクター部には同じくリーケージフラックスが極少のトロイダルトランスを採用してローノイズとしています。

これまでの真空管プリアンプの常識を超越した「MODEL11Ⅱ」はパールホワイト多層塗装ラウンドパネルと磨きステンレスベースシャシー、ブラックアルマイトトップカバーとアンプデザインそのものが存在感を示しながらも「音楽」には機器の存在を感じさせないように作られています。

「MODEL11Ⅱ」リア

新開発のSCFB(シングルクロスフィードバック)回路による有機的でリアルな質感はフルバランス回路の限界を超えるものです。
収録時の音楽の生々しさを引き出す「MODEL11Ⅱ」の素晴らしさを是非ご自身の感性でお確かめください。

仕様: 真空管素子によるフルバランス増幅回路
構成真空管: ECC82/12AU7×4
入力端子: 5系統  XLR×2、RCA×3
出力端子: 2系統  XLR×1、RCA×1
筐体サイズ: 315mm(幅)X315mm(奥行き)X86mm(高さ) (脚部、ノブ、端子部を含まない本体サイズ)
重量: 8.2kg

定価800.000円(本体価格)
ご注意: 本機は完全受注生産品です。
これまでのオフホワイトソリッドカラーでの納品、入出力端子の変更も承っております。

ELAC BS312

ELAC BS312で鳴らすグラウンドアイソレーションオーディオを聴きにお客さまが来られるようになりました。

空間を取り込んだソフトをかけると奏者が浮かび上がり楽器の質感が生々しく再現される瞬間を聴いていただいております。

この空間表現に長けた音質はBS312のバッフル面積が極少であるためでは無いかと推測しております。
一般的なダイナミックスピーカーはスピーカードライバーによる電磁音響変換とエンクロージャーによる逆位相音の制御設計が主になっています。
ドライバーの動作環境とエンクロージャー容量は相反関係にあるため当社の試聴室をはじめ一般的な家庭でのリスニングではハーベスのHLモニターより小型のHLコンパクト位のサイズが相応しいのではないかと思っておりました。
拡声器として発達した38cm口径スピーカーのもつ傍若無人ぶりな挙動をハイパワーアンプで抑え込んで鳴らすようなオーディオは過去のものとしても7~8インチクラスのドライバーと先に挙げたエンクロージャーサイズは要るように感じておりました。
バッフル面からの付帯音が気にはなるもののこれ位の口径とエンクロージャーサイズは必要悪とどこか諦めていたことをBS312は打ち破ってしまいました。

金属エンクロージャーのものも含めていくつもの小型スピーカーを聴いてきましたが、良く出来たものでもこのサイズながら「良く鳴る」ものだと感激させてはくれるものの「一生懸命」さが仇になり穏やかに音楽を聴く楽しみに浸れるものはありませんでした。

小型スピーカーを意識させないBS312には「良く鳴る」「一生懸命」さはなく、音楽をそのまま奏で必要な低域を部屋に飽和することなく耳に届けるさまを体験すると部屋の空間容量とスピーカードライバーの口径サイズの相関関係がスピーカー選択の鍵であり、聴く度に10畳くらいの大きさでは小口径が相応しいと感じずにはおれません。

4.5インチドライバーとハイルドライバーだけのフロントサイズから出る音は井上千岳氏がオーディオアクセサリー誌で記された通りスピーカーが鳴っていることを感じさせないものです。

とはいえ鳴らしている「MODEL57」や「MODEL52」の左右スピーカー端子のグラウンド側をビニール線で繋いでしまうとただの「良く鳴る」小型スピーカーに変身してしまいます。
井上先生にBS312のベストマッチアンプに「MODEL57」を推挙して頂いたのはグラウンドアイソレーション効果を認めていただけたものと我田引水しておきます。

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